尾崎行雄記念財団が主催する「第28期咢堂塾」で学んでいます。11月7日(土)の第3回のテーマは「選挙、民主主義、メディアの課題」。講師は、フリーランスライターで開高健ノンフィクション賞受賞作家の畠山理仁(はたけやま・みちよし)さんでした。
ポイント
・咢堂塾は、「憲政の神様」尾崎行雄(号・咢堂)の名を冠した政治塾です。尾崎は、いまの相模原市緑区又野の生まれです。
・会場の憲政記念館に立つ時計塔には、三権分立と「さらに一歩」の願いが込められています。
・畠山さんは、立候補した全員に会って話を聞きます。その取材が照らすのは、「勝ちたい」と「なぜ出たのか」のあいだで揺れる、候補者一人ひとりの生の気持ちです。
・咢堂塾は、過去の講義を録画で視聴でき、途中からの入塾も受け付けています。
畠山理仁さんの講義から——「全員に会う」取材が照らすもの
畠山理仁さんとは
1973年愛知県生まれのフリーランスライターです。早稲田大学在学中の1993年に雑誌で取材・執筆を始め、1998年に独立しました。政治家と選挙を主なテーマにし、選挙の現場を訪ねる面白さを伝える「選挙漫遊」を提唱しています。
2017年、『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』(集英社)で第15回開高健ノンフィクション賞を受賞。2023年には、その選挙取材に密着したドキュメンタリー映画『NO 選挙, NO LIFE』(前田亜紀監督)が公開されました。
講義と畠山さんの発信から見える4つのポイント
畠山さんは、すべての候補者に会って話を聞く姿勢を貫き、投票の大切さや、選挙を通して一人ひとりが考えていること、大切にしていることに光を当ててきました。
① 立候補した全員に会う
取材する選挙では、立候補した全員に会い、話を聞く。取材できなければ記事にしない。それが畠山さんの原則です。新聞やテレビは「主要候補」を中心に報じ、ほかの候補は名前や肩書き程度しか伝えられないことも少なくありません。畠山さんの取材は、その空白を埋める試みです。泡沫候補としてあまり取り上げられることのない候補者、無所属で挑む候補者も、その立候補する覚悟に敬意を払ってきたことが印象的でした。
② 選挙の現場にある「生の気持ち」
選挙の現場では、誰もが「勝つこと」を目指して走ります。しかし、多くの人が、心のどこかで「これでいいのか」という疑問も抱えています。「当選しなければ」という思いと、「なぜ自分は選挙に出たのか」と初心に立ち返る気持ち。様々な思いを抱えて、誰もがその場に立っています。畠山さんの取材は、そうした生の気持ちに光を当て、有権者に届けようとするものです。
③ 一票の大切さと、「見に行く」選挙
選挙は、一人ひとりが何を考え、何を大切にしているかが表に出る場でもあります。畠山さんは、投票の大切さとともに、街頭演説に足を運ぶことを勧めてきました。街頭演説を「野外ライブ」にたとえ、生で見てこそ、候補者の伝える力や聴衆の反応など、報道では分からないことが見えてくると語っています。群馬県知事選挙では、山本一太候補は、通常の立会演説会と違って、歌手として活動している持ち歌(?)を7曲も熱唱していたそうです。新しい試みとして参考になる部分と、それでも当選するという別の意味での感心もありました。
④ メディアの課題
選挙期間に入ると、新聞やテレビは公平性に配慮して、選挙報道を控えがちです。畠山さんは、取るに足らないデマが否定されないまま放置され、過激な主張が広がる危うさを指摘しています。SNSが選挙の行方を左右するいま、有権者に届く情報の質が問われています。
議員として、候補者として感じたこと
相模原市議会議員として、私自身も選挙の現場に立ってきました。選挙では、どうしても「当選しなければ」という思いが先に立ちます。それでも、ふとした瞬間に「何のために立候補したのか」と自分に問い直す。その揺れは、多くの候補者に共通するものだと思います。本日の話でも、この部分が私の中でも素直に思い起こした率直な感情です。
畠山さんは、その揺れ動く生の気持ちを、勝ち負けや「主要」かどうかで切り分けずに受け止め、有権者に届けようとしています。その姿勢に、深く共感しました。
候補者一人ひとりの思いが届けば、投票は「誰かを選ぶ作業」から「自分の考えを託す行為」に変わります。憲政記念館(尾崎行雄記念会館)の時計塔の「百尺竿頭一歩を進む」は、当選をゴールとせず、そこからさらに一歩を進めよという、議員への励ましにも聞こえてきます。私も、あらためて選挙のあり方については臆せず発言し、議会においても、自分の考え、思いを、言葉を尽くして伝え続けたいと思います。
※建て替え工事が進む憲政記念館(旧尾崎行雄記念会館)敷地に、高さ31.5メートルの時計塔が立っています。尾崎記念会館の一部として、塔の前の噴水池・花壇とともに設計され、1960年7月に完成しました。三面を持つ塔には、立法・行政・司法の三権分立が象徴されています。塔の高さは、百尺(30.3メートル)より高い31.5メートル。努力を尽くした上に、さらに努力して向上するという意味のことわざ「1. 百尺竿頭一歩を進む」にちなんでいます。

最後に
尾崎行雄は「人生の本舞台は常に将来に在り」という言葉を残しました。選挙もまた、投票日がゴールではありません。候補者にとっても有権者にとっても、本舞台はそこから先にあります。次の選挙では、ぜひ候補者の街頭演説に足を運び、その人の言葉を直接聞いてみてください。候補者一人ひとりの思いに触れたとき、一票の重みがきっと違って見えるはずです。
咢堂塾のご案内——録画視聴と途中入塾
咢堂塾は、仕事や議会活動と両立しながら学べるよう工夫されています。
- 録画で学べる:講義は録画され、後から視聴できます。会場に来られなかった回や、入塾前の講義もさかのぼって学べます。
- 途中入塾も募集中:現在、期の途中からでも入塾できます。
- こんな方に:地方議員、政治家を志す方、政治や政策を学びたい社会人・学生の方など。
- 申し込み・問い合わせ:尾崎行雄記念財団のWebサイトをご覧ください。
- その他:受講料3万円(全13回)、講義は通常土曜13時30分から、録画は翌週から塾生専用サイトで期間中何度でも視聴できる形です。
おまけ
以下は、私が作成し、現在運営しているサービスです。ぜひ、ご覧になり、クイズに挑戦したり、自分のまちのデータで選挙のシミュレーションに挑戦してみてください!
◆尾崎咢堂クイズ 相模原市が生んだ「憲政の神様」尾崎咢堂のことを楽しく学んでください!
https://ab4.jp/gakudo-quiz/
◆選挙シミュレーター 投票率による結果の違い、様々な投票方式、一票の価値の具体的数値での試算、など。
https://ab4.jp/senkyo-sim/index.html