【忙中閑話】政令指定都市をめざして（阿部善博・相模原市議会議員）
- JANJAN ザ・選挙【忙中閑話】より転載 -
早稲田大学マニフェスト研究所 2009/02/27
政令指定都市移行にむけて、議員同士の白熱した議論が繰り広げられる神奈川県の相模原市議会。阿部善博議員は「政令指定都市の実現に関する意見書」や「住民投票条例」に関する議論の経緯などを紹介しながら、「移行が目的なのではない。地方政府としての議会のあるべき姿を描き、住民とともに成長することこそ、議会の目指すところだ」と語る。
相模原市では、現在、平成２２年４月１日の政令指定都市移行実現に向け、取り組みが進められている。
阿部善博・相模原市議会議員
市議会においては、昨年１２月定例会で、議員３４名（定数５２名）が提出者となり「政令指定都市の実現に関する意見書」が提出された。提出者を代表する議員による説明の後、提出者となっていない議員による質疑が行われ、提出者側である議員がその質疑に答えるという形での議論が行われた。議員同士の議論を実現できた瞬間、１２月１９日（１２月議会最終日）のことである。
議員同士での議論は白熱し、深夜に至っても質疑予定者の順番がまだ回ってきていない状況のため、急遽議会運営委員会を開催し、引き続き質疑を行い、翌２０日まで１２月定例会を延長することとなった。このとき夜通し議会が決定した。
議員の皆さんの中には、議会を継続して最後まで（朝まで）このまま行うべきとの意見が多かったようだ。なぜだか、議員のみなさんは、こうした時には気持ちが昂ぶり燃えてくるもののようである。
質疑が継続して行われた後、討論、記名投票による採決が順次行われ、その結果３８名の賛成により、意見書は原案のとおり可決された。その他予定されていた議事日程をすべて終了したときには、すでに朝４時前となっていた。帰り際に見上た空には、星がとてもきれいに輝いていた。
私はこの議会において、「議員同士による議論の大切さ」と「もっと議会の側から議案（条例）をどんどん出して行くべき」との思いを得た。政令指定都市移行と言う特別な議会だからと言うのではなく、今後もこうした取り組みを継続して行かなければならない。議会が活発な議論と活動を行っていれば、それは必ず市民のためになる。そして様々な形で市政発展につながって行く。それは、自立した都市にふさわしい議会の姿でもあるはずだ。
そんなとき、「激しい選挙の後は、必ず良い政治が行われる」――ふとそんな言葉を思い出し、私は「選挙」の文字を「議論」に置き換えてみたりした。
この後、年が明けた平成２１年には、相模原市議会１月臨時会が開催された。政令指定都市移行の賛否を問う住民投票条例の制定について、本請求に必要な有権者の２％を上回る２万７千人近い署名とともに、住民による条例案が提出されたからだ。
審議の結果、住民投票条例は、先の意見書賛成と同数（３８名）の反対により否決となったが、住民による条例案の提出があったことの意義は大きい。条例制定請求代表者による説明では、「住民投票の重み」より「政令指定都市への拙速な移行が問題」との趣旨の発言もあり、やや政治的な意図も感じられたが、政令指定都市制度よりずっと重い「これからの私たちの自治のあり方」を考える絶好の機会ともなった。
多数決での決定は尊重しなければならないが、一方で少数となってしまった意見をも尊重し、配慮して行かなければならない。今後も、更に説明責任を果たすべく取り組むことはもちろん、また、３８対１３と言う議会での採決の結果についても、１３の側の納得を得られるだけの努力を継続しなければならない。
相模原市の政令指定都市移行はまだ決まったわけではない。しかし、真の地方自治実現を目指す私たち議会にとっては、政令指定都市移行が目的なのではない。地方政府としての議会のあるべき姿を描き、住民とともに成長し、自分たちの民主主義をともに育てて行くことこそ、私たち議会の目指すところである。
相模原市には、今この風が吹き始めている。
相模原市議会議員・阿部善博
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■プロフィール
あべよしひろ――１９７０（昭和４５）年５月９日生まれ。神奈川県立相模原高校卒業、龍谷大学大学院文学研究科西洋哲学専攻修了。ＩＴ関係企業勤務等を経て、２００３（平成１５）年より相模原市議会議員（現在２期目）。現在、会派「新政クラブ」所属。建設委員会委員長、議会運営委員会委員。
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※JANJAN ザ・選挙【忙中閑話】より転載。
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【忙中閑話】政令指定都市をめざして（2009/02/27）
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