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「あけましておめでとう」なら選挙違反。

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『「あけましておめでとう」なら選挙違反。』(カテゴリ:未分類)
- CNET【eデモクラシーの実現】より転載 -
 「あけましておめでとう」なら選挙違反。
 政治家のホームページに、「公職選挙法により時候のあいさつ等は禁止されており、皆さんにごあいさつ申し上げることは出来ません。」等の文面を見かけたことがある。
 これはホームページやブログの読者の方から「あけましておめでとう」くらい書かないのか、と指摘されてしまったのかもしれないし、政治家でない他の方と同様、やはり一般的なあいさつ文を掲載したい気持ちはあるのだが、掲載することが禁止されているためその思いだけを遠まわしに表現しているのかもしれない。また、こうした記述により、自分がきちんとルールを理解して取り組んでいるというアピールにもなり、公職選挙法をめぐる現状の周知につながることもあるだろう。
 ホームページなどまったく思いつきもしないであろう昭和二十五年に制定された公職選挙法では、答礼のための自筆を除きあいさつ状の禁止が定められている。その第百四十七条の二は、お金のかからない公正な選挙の実現を目指したものであり、その意義は大きい。しかし、インターネットなどによる活動の実態や一般的な認識の現状を踏まえると、もう一度お金のかからない公正な選挙、そしてすべての人が求めている選挙の姿について考える時が来ているのではないかとあらためて感じられる。
 インターネットでの発言は、公職選挙法の解釈では、現在文書図画と同様の位置づけにされている。ホームページでもブログでもTwitterでも動画でも、それがオープンになっている以上、自分の選挙区に関わる有権者を含む不特定多数へ、答礼のための自筆でなく、時候のあいさつ状が送られたと同様に受け取られてしまう。メールにしても相手が自分の選挙区の有権者であれば同様だ。
 また、そもそもインターネットの世界の話をしている時に「答礼のための自筆」という発想自体に違和感がある。さらに、一般的な実際の年賀状でも、大きな費用をかけず綺麗な写真を自分で印刷し家族の様子を伝えるなど、その目的や実態は大きく変わってきている。
 Twitterをはじめインターネットの世界では、一方的な情報発信もあるだろうが、基本的にはコミュニケーションが中心だ。やり取りの中にあいさつ行為があったとしてもそれは自然なことだ。極端な例は別にしても、コミュニケーションの中でのあいさつ行為を「選挙法違反で問題だ」と受け取る方はいないだろうと思うが、どうだろうか?もちろん、インターネットでのやり取りすべてが選挙活動で政治的中身がない、との指摘があれば、それはまた別問題として考えなければならないのだが…。
 現状では、法の趣旨から考えれば、むしろインターネットではなく新聞や地域情報誌等への有料の名刺広告にこそ問題がある。たとえ時候のあいさつ「あけましておめでとう」の一言がなくとも、企業や諸団体の代表の方の名刺広告とともに政治家の名前が掲載されていれば、これは実質的には時候のあいさつではなないだろうか。それに大きな費用もかかるものだ。公職選挙法第百五十二条に定められている「あいさつを目的とする有料広告」と同様と受け取られても仕方がないのではないかと思う。
 もちろん、インターネットを活用し政策を訴え議論することは可能であるし、それは政治家の本分でもあるのだから、その前振りとして時候のあいさつを行ったとしても問題はないはずである。しかし、それが政策の主張が「主」であるのか、あいさつが「主」であるのか、これは他者が判断することになるので、実際には微妙なことが確かにある。法の不理解や不勉強との誤解を受けないため、時候のあいさつはまったく触れないことが現状最良の方策かもしれない。政治家にとっても、本来は発言の中身に全力を注ぎたいのに、本質的でない部分にばかり気を遣ってしまっているとしたら残念なことだ。その読者の方も何だか不自然な感じを受けているかもしれない。
 これは、法(とその解釈)が複雑になってわかりにくく、実態とずれているため、選挙のあり方についての共通認識ができていないことが一因である。インターネット時代の選挙の在り方について、大いに議論したい。
<参考>
公職選挙法より
(あいさつ状の禁止)
公職選挙法 第百四十七条の二
  公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)は、当該選挙区(選挙区がないときは選挙の行われる区域)内にある者に対し、答礼のための自筆によるものを除き、年賀状、寒中見舞状、暑中見舞状その他これらに類するあいさつ状(電報その他これに類するものを含む。)を出してはならない。
(あいさつを目的とする有料広告の禁止)
公職選挙法 第百五十二条
 公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。次項において「公職の候補者等」という。)及び第199条の5(後援団体に関する寄附等の禁止)第1項に規定する後援団体(次項において「後援団体」という。)は、当該選挙区(選挙区がないときは選挙の行われる区域。次項において同じ。)内にある者に対する主としてあいさつ(年賀、寒中見舞、暑中見舞その他これらに類するもののためにするあいさつ及び慶弔、激励、感謝その他これらに類するもののためにするあいさつに限る。次項において同じ。)を目的とする広告を、有料で、新聞紙、雑誌、ビラ、パンフレットその他これらに類するものに掲載させ、又は一般放送事業者、有線テレビジョン放送事業者(有線テレビジョン放送法(昭和47年法律第114号)第2条第4項の有線テレビジョン放送事業者をいう。次項において同じ。)、有線ラジオ放送(有線ラジオ放送業務の運用の規正に関する法律(昭和26年法律第135号)第2条の有線ラジオ放送をいう。次項において同じ。)の業務を行う者若しくは電気通信役務利用放送(電気通信役務利用放送法(平成13年法律第85号)第2条第1項の電気通信役務利用放送をいう。次項において同じ。)の業務を行う者の放送設備により放送をさせることができない。
2 何人も、公職の候補者等又は後援団体に対して、当該選挙区内にある者に対する主としてあいさつを目的とする広告を、新聞紙、雑誌、ビラ、パンフレットその他これらに類するものに有料で掲載させ、又は一般放送事業者、有線テレビジョン放送事業者、有線ラジオ放送の業務を行う者若しくは電気通信役務利用放送の業務を行う者の放送設備により有料で放送をさせることを求めてはならない。
※CNET【eデモクラシーの実現】より転載。
※CNET読者ブログのサービス終了にともない、記事移転を行いました。

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